お客様の強いお申し出への対応。信頼を深める5つのステップと言い方
お客様から強い口調でお申し出をいただくと、胸がぎゅっとなります。早く終わらせたい一心で、つい言い訳や説明を重ねてしまうこともあるでしょう。けれど、このときのご対応こそが、お客様との信頼を一段深める分かれ道になります。
強いお申し出は「期待の裏返し」
強いお申し出をくださるお客様の多くは、もともと期待してくださっていた方です。期待していたぶん、裏切られたと感じておられます。
どうでもよい相手には、人はわざわざ声を上げません。お申し出は、「まだあなたの会社とつながっていたい」という気持ちの表れでもあるのです。
モーガン&ハントは、信頼と関係を続けたい気持ちが、長いお付き合いの柱になると示しました。お申し出への向き合い方しだいで、その柱は折れもすれば、太くもなります。
向き合うときの基本
まず押さえておきたい基本は、次の四つです。
- 感情と事実を分ける。お気持ちはまるごと受け止め、事実は落ち着いて一緒に確かめます。
- 謝る範囲を限定する。不快な思いをさせたことには、心から謝ります。ただし、それは非を全部認めることとは別です。
- 一人で抱えない。上司や責任者に早めに共有し、会社として向き合います。
- やり取りを記録する。日時、お申し出の内容、お伝えしたことを残します。記録は自分とお客様の両方を守ります。
信頼を深める5つのステップ
お申し出へのご対応は、次の5つの順で進めると落ち着いて向き合えます。
- 受け止める。途中でさえぎらず、最後までお聞きします。
- 気持ちに謝る。「ご不快な思いをおかけして、申し訳ございません」と、お気持ちに対して謝ります。
- 事実を一緒に確かめる。いつ、何が、どうなったかを、お客様と同じ側に立って整理します。
- できることを具体的に示す。「何ができるか」を、期日とあわせてお伝えします。
- 約束より早く、一つ多く返す。お約束の期日より早く連絡し、ひとつ気づかいを添えます。
解決したあと、しばらくしてから「その後いかがですか」とご連絡してみてください。お申し出をくださったお客様が、のちに一番の応援者になり、ご紹介をくださることも珍しくありません。
そのまま使える言い方と、控えたい言葉
言い方ひとつで、同じ内容でも受け取られ方が大きく変わります。コツは「ですが」より「そのうえで」です。
| 場面 | おすすめの言い方 |
|---|---|
| 最初の受け止め | 「ご不快な思いをおかけして、申し訳ございません。詳しくお聞かせいただけますか」 |
| 行き違いがありそうなとき | 「私どものご説明が足りなかったかもしれません。もう一度確かめさせてください」 |
| ご希望にそのまま応えられないとき | 「〇〇は難しいのですが、△△であればすぐにご用意できます」 |
| その場で答えられないとき | 「確実なお答えをしたいので、〇日〇時までに私からご連絡します」 |
| 責任の所在を示すとき | 「責任を持って私が承ります。内容は責任者にも必ず共有いたします」 |
| 解決したあと | 「ご指摘のおかげで〇〇を改めました。教えていただき、ありがとうございました」 |
反対に、控えたい言葉もあります。
- 「ですから」「普通は」:お客様が責められていると感じます。
- 「担当ではないので」:会社として向き合っていない印象を与えます。
- その場しのぎの「今回だけ特別に」:前例になり、あとで困ります。
- 理屈で論破する:言い負かしても、信頼は戻りません。
カスハラ対策の義務化と、お客様との信頼
2026年10月1日から、改正労働施策総合推進法により、カスタマーハラスメント対策がすべての事業主の義務になりました。法の定義では、①顧客等の言動であって、②社会通念上許容される範囲を超えたもので、③労働者の就業環境が害されるもの、の3つを全て満たすものがカスタマーハラスメントにあたります。会社として線引きを決め、働く人を守る体制を整えることは大切です。
そのうえで、強い口調だけでカスハラと決めつけないことも大切です。声が大きいのは、それだけ困っておられるからかもしれません。線を越えた言動には会社として毅然と向き合い、そうでないお申し出には誠実に向き合う。この二つを分けて考えることが、働く人とお客様の両方を大切にする道です。
業種別のヒント
- 自動車販売:修理や納期のお申し出は、サービス部門と一緒に事実を確かめます。代車や連絡の頻度など、「一つ多く返す」工夫がしやすい業種です。
- 不動産:引き渡し後の不具合は、暮らしに直結するぶんお気持ちも強くなります。現地に足を運び、目で一緒に確かめる姿勢が伝わります。
- 法人営業:ご担当者は、社内で板挟みになっておられることがあります。社内でご説明しやすい資料を添えると、ご担当者を守ることにもなります。
明日からの一歩
- 「ですが」を「そのうえで」に言い換える練習を、今日の会話で一度してみる
- お申し出を受けたときに共有する相手(上司・責任者)を決めておく
- 過去にお申し出をくださったお客様に、「その後いかがですか」と一本連絡してみる
お客様対応の研修(言い方のロールプレイ、社内の線引きづくり)は、研修会社の株式会社RENGENEでお受けしています。
あなたの「縁」と「誠」の力を確かめる
この記事は、トラスト(信頼)営業チェックの問15「クレームや不満を関係を深める機会にする」(縁)と、問5「ミスや行き違いは先に自分から連絡する」(誠)に対応しています。40問のチェックで、お申し出に向き合う力の土台を確かめてみてください。
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