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【工務店】「大工がいない」は本当か
工務店の社長とお話しすると、ほぼ必ず出てくるのが「大工がいない」という言葉です。棟梁は六十代、七十代になり、その下に続く若手がいない。現場は回っているけれど、十年先を思うと眠れない。そんな声を、私は各地で何度も聞いてきました。
大工の高齢化と若手不足は、業界全体の流れとして確かにあります。けれど、同じ地域、同じ規模の工務店でも、若い人が毎年ぽつりぽつりと入ってくる会社と、何年も応募ゼロの会社に分かれています。その差は、地域の人口だけでは説明できません。
ある工務店で、私は社長にこう聞きました。「この一年で、若い人に『うちで大工をやってみないか』と、何回声をかけましたか」。社長はしばらく考えて、「ゼロかもしれん」と笑いました。ハローワークに求人票を出したきり、内容はもう何年も同じ。写真もなく、仕事内容の欄には「木造住宅の新築・リフォーム」とだけ書かれていました。
「いない」のではなく、「こちらから会いに行っていない」。多くの場合、ここが出発点です。若い人の側から見ると、大工という仕事は知る機会そのものが少ないのです。高校の進路指導で名前が挙がることも、身近に大工がいることも、昔より減っています。知らない仕事には、応募のしようがありません。
もう一つ、社長の頭の中にある「今の若い者は根性がない」という思い込みも、点検してみる価値があります。私は毎年の新人研修で約1,000人の若い人と向き合っていますが、手を動かしてものをつくることに目を輝かせる人は、今も確かにいます。ただ、彼らは「怒鳴られながら何年も我慢する世界」には入ってきません。入口で何が待っているかが見えないと、怖くて飛び込めないのです。
実際、その工務店では、求人票に棟梁のひと言と見習いの一日の流れを書き足し、地元の工業高校に社長自ら足を運ぶようになってから、少しずつ問い合わせが来るようになりました。劇的な変化ではありません。けれど「ゼロ」が「一」になったことで、社長の顔つきが変わりました。
ですから、この連載ではまず「来ない理由」を会社の側に探すところから始めます。求人の出し方、面接の仕方、入社初日の迎え方、最初の三か月の過ごし方。一つひとつは小さなことですが、積み重なると「あの工務店は若い人が続く」という評判になります。地域の口コミは、施主さんの間だけでなく、若い人とその親の間にも流れています。
社長にもう一つお聞きしたのは、「最後に若い人が入ってきたのは、どんなきっかけでしたか」ということでした。答えは、十年ほど前に知り合いの紹介で入った一人だけ。その彼は今、三十代半ばで現場の中心にいます。つまり、この会社には若い人を育てる力がちゃんとあったのです。足りなかったのは、入口をつくる手間だけでした。
工務店の仕事は、本来とても魅力のある仕事です。自分の手で建てた家に、施主さんが何十年も暮らす。地図に残るとまでは言いませんが、町の風景に残る仕事です。その魅力を知っているのは、現場で働いている皆さん自身です。魅力を知っている人が、それを言葉にして外に届けていない。そこに、もったいなさがあります。
人が来ない時代だからこそ、来てくれた一人を大事にする会社に人は集まります。大工がいないと嘆く前に、自分たちの会社が若い人の目にどう映っているかを、一度確かめてみてください。
明日の朝礼でできること
「この一年で、若い人に大工の仕事を勧めたことがある人」と手を挙げてもらい、その数を全員で確かめる。
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